7月6日、最高裁判所で注目すべき判決が出されました。
これは、年金形式で受け取る生命保険金について、相続税では生命保険金等として課税対象となり、さらに毎年受け取るこの年金部分(=保険金の分割払)について所得税が課税されているのは二重課税で所得税法に違反しているとして、納税者が国を訴えた事件です。
所得税では「相続、遺贈又は個人からの贈与により取得する所得については所得税を課さない」という規定があります。
国側は、保険金を年金形式で受け取る場合は、保険給付を受ける権利(基本権)について相続税を課税し、保険金請求期日が到来したことによる金銭を請求する権利(支分権)について所得税を課税しているのだから、それぞれは別個の権利であり、二重課税には当たらないと主張してきました。
なかなか分かりずらい主張です・・・・(確かに民法では基本権と支分権は別個の権利と位置付けられていますが。)
地裁では納税者が勝訴し、高裁では逆転敗訴となってきたなかで、最高裁が弁論を開くということで注目されてきました。最高裁で弁論が開かれるということは、高裁の判決が覆る可能性が高いからです。
最高裁では、この年金形式で受け取る保険金について、基本権も支分権も経済的価値は同じなのだから、相続税が課された部分について所得税を課するのは所得税法に反するとの判決をしました。
40数年にもわたり、当たり前のようになされてきた課税実務を覆すのは、瞳目すべき判決といえます。
実際には給付金すべてに所得税が課されないわけではなく、年金形式で保険金を受け取る場合、運用益に相当する部分も給付されるので、これは相続税の課税対象ではないため所得税が課税されます。この部分の課税の仕方については、今後通達等で明らかにされることと思いますが、現段階では明らかになっておりません。
日本生命では、08年度時点で年金支給中の件数は約3800件だそうです。過去の分も含めると保険会社全体では想像もつかない件数になりそうです。相当数の方が所得税を納め過ぎている可能性が高いわけです。
なお、納め過ぎた所得税については、法律では5年前までしか遡って還付できないのですが、5年を超える部分の救済についても国税庁は対応を検討しているようです。
所得税だけでなく住民税や国民健康保険料にも影響があるため、今後、国や自治体はどのような対応をするのか注目していきたいと思います。
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